コロナの予防に漢方薬!?

お気に入りのカフェ 陽香さんでテイクアウト
目次

コロナの予防に使える漢方薬が見つかった!?

お気に入りのカフェ 陽香さんでテイクアウト

「コロナの予防に使える漢方薬が見つかった!」
こんな話題をふと耳にしました。補中益気湯(ホチュウエッキトウ)というお薬が筆頭だそうです。鍼灸師含め、漢方を扱う先生なら一度は聞いたことがあるくらいの超有名な処方です。ちなみにツムラの41番でもあります。まあ結論からいうとデマに近い内容だったのですが、「巧妙な嘘には真実を少し混ぜる」というように事実ベースの部分にはなかなか興味深い内容がありました。

補中益気湯が生まれた経緯

補中益気湯というのは、いまをさかのぼること約800年。1231年に出版された医学書『内外傷弁惑論ナイガイショウベンワクロン』の中で初めて登場する処方です。ちなみに著者は李東垣リトウエンという人で、中国では「医王」という別名があるぐらいの有名人です。自分が鍼灸師をやっていて最も刺激を受けた人の一人でもあります。
さてここからは少しばかり歴史を・・・
「医王」との呼び声もある李東垣の生きた時代は、まさに乱世。戦争につぐ戦争。戦争がいつ終わるかも分からないそんな世の中で人々のストレスはピークに達していたようです。また1200年代ですので今のようなインフラもなく、栄養状態も悪く非常に劣悪な環境だったことが手記から伺えます。現代と比較するのはお門違いかもしれませんが、ストレスフルな社会で生きている状況に、終息の見えないコロナの問題など、社会の閉塞感は近いものがあるのかもしれません。

補中益気湯はどんなお薬なのか?

そんな状況下では感染症も広がっていたようで、多くの人が高熱にうなされて亡くなっていきました。中国には「傷寒論」という本があり、その本をもとに感染症に対する治療法は確立していたのですが、この時代の特殊性かなかなか治療成績が上がらず苦労していました。

そんな中、李東垣は「今まではウイルスを追い出すというお薬ばかりだったが、人は体力をしっかりつければ自然と回復して行くのではないだろうか」と思いつきます。そして身体を栄養するものは、「呼吸」もしくは「食事」しかありません。李東垣はこの「食事」に注目して、「胃腸の消化吸収機能を高めること」に注力するような処方を研究・開発しました。補中益気湯の誕生です。

現代でも現役の補中益気湯

さてこの補中益気湯ですが、単に消化吸収機能を高めるだけではありません。ヒトがしっかりと消化吸収できるためには、身体がリラックスしていなければなりません。身体も心もガチガチに緊張していては、美味しいご飯も味が分からないものです。補中益気湯には、季肋部をくつろがせることで、身体をリラックスさせ、消化吸収しやすく体力がつきやすいお身体づくりをするという効果があります。まさにストレスフルな時代だからこそ生まれた処方なのかもしれません。

実はこの補中益気湯が肺炎に対して予防効果があるのではないか?ということが研究されていました。実際にIL-17という物質を増加させることで、肺炎に罹患した時に重傷化を防いでくれるという論文が出されています。しかし調べた限りですと、まだマウスの実験段階だそうなので、人ではどういう結果が出るかは微妙です(もし臨床でのデータがあるよって方いれば教えてください)。

引用元の論文はこちら(「小林製薬と北里大学、医療へ繋ぐ「橋渡し研究」として 漢方薬「補中益気湯 」の感染防御に関する薬理試験データを共同で取得」)

コロナウイルスに使えるかはまだ不明

補中益気湯には抗ウイルス作用があるらしいよ、ということがだんだん分かってきたという訳です。しかしコロナウイルスに効果があるかはまだ微妙なところです。作用機序を見ていると、効果があってもおかしくなさそうだなという印象です。しかし、人での実験とマウスの実験は、結果が変わることも多いですし、まだまだ効くとは断定できないのが、本音ですね。今後注目して見ていきたいと思います。

中国では、コロナへの漢方薬として補中益気湯を含め数種類の処方があげられています。しかし中国はポジションを取るのが非常にうまい国です。実際に効果のある論文が見当たらないところをみると、漢方薬というのは、未知の感染症にも使えるんだよ!という声明を出したかった意味合いが強いのでは?と思っています。

東洋医学的に考えると?

さて、ここからは東洋医学を臨床で営む鍼灸師としての考察です。

補中益気湯というのは、非常に優秀な処方で「医王湯」という別名があります。それくらい様々な効果を持つということです。しかし、その効果を発揮させるためには、やはり一人一人に合わせて処方を調整する(加味法)の技術が必要になってくるのではないか?と考えています。

実際に、補中益気湯含めた李東垣の処方は、他の処方に比べて構成要素が多くなっています。これは、処方を作った李東垣が、その時の症状に合わせて処方を微調整していたからだということが、出典の「内外傷弁惑論』からも読み取れます。漢方や鍼灸は副作用が少ないとよく言われますが、それは少ない薬効で一番お身体に効果を発揮できる部分を術者側が見つけて、ツボやお薬を組み合わせて、処方・施術しているからに他なりません。何事もメリットだけが存在するということはないのです。
またワクチンのように画一的に、多くの人に効果をもたらすのが現代医学だとすれば、東洋医学は非常に効率の悪いオーダーメイドな方法で一人一人に合うものを探している方法なのかもしれません。

さらに言えば薬も過ぎれば毒となるで、補中益気湯には若干温める効果があるので、合わないヒトが飲むと火照りやのぼせが出て、非常に不快な思いをされることが多々あります。生兵法はケガのモト。ニュースに踊らされて飲むのは自分のためになりませんのでお気をつけください。

まとめ

漢方や鍼灸の研究が進むのは非常に嬉しい反面。鍼灸臨床で行われるような、患者さんの訴えによって施術を調整する細かい差異が失われてしまわないか?という部分は非常に気になるところです。データはあくまでもデータ。それを扱う僕らのリテラシーが求められているのかもしれません。

 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次